エンデと地域通貨(2)

[ 0 ] 2010年12月5日

お金は老化しなければならない

ミヒャエル・エンデは、実業家でもあったシルビオ・ゲゼルという民間経済学者の「老化するお金」の考えを、とても重要ととらえています。

ゲゼルの思想は、ケインズも彼の著作「一般理論」のなかで次のように紹介しているそうです。

「シルビオ・ゲゼルは不当にも誤解されている。われわれは将来の人々がマルクスの思想よりはゲゼルの思想からいっそう多くのものを学ぶだろうと考えている」

ここからエンデの語りを引用します。かつてNHKで「エンデの遺言」という番組が制作され、そのとき彼が話した内容です。

「第一次世界大戦後、レーテ共和国時代のバイエルンにシルビオ・ゲゼルという人物がいて、ゲゼルは「お金は老化しなければならない」というテーゼを述べています。

ゲゼルはお金で買ったものは、ジャガイモにせよ靴にせよ消費されます。ジャガイモは食べられ靴は履きつぶされます。しかし、その購入に使ったお金はなくなりません。そこでは、モノとしてのお金と消費物資との間で不当競争が行われている、とゲゼルはいいます。

お金自体はモノですね。売買されるのですから。しかし、お金は減ったり滅することがないものなのです。一方、本来の意味でのモノは経済プロセスのなかで消費され、なくなります。

そこでゲゼルは、お金も経済プロセスの終わりにはなくなるべきであるといいます。ちょうど血液が骨髄でつくられ、循環して、その役目を果たしたあとに老化して排泄されるように。お金とは経済という、いわば有機的組織を循環する血液のようなものです。

このゲゼルの理論を実践し、成功した例があります。1929年の世界大恐慌後のオーストリアのヴェルグルという街での話です。町は負債を抱え、失業者も多い状態でした。

そこでヴェルグルの町長だったウンターグッゲンベルガーは現行の貨幣のほかに、老化するお金のシステムを導入したのです。このシステムは簡単にいえば、一ヶ月ごとに1%づつ価値が減少するというものでした。

町民は毎月1%分のスタンプを買って老化するお金に張らなくてはならないというしくみでした。このお金はもっていても増えないばかりか、減るので、皆がそれをすぐに使いました。

つまり貯めることなく経済の輪の中に戻したのです。お金は持ち主を変えれば変えるほど、購買力は大きくなるのです。一日に二度、持ち主を変えるマルクは、一日に一度しか持ち主を変えないマルクより購買力が大きいのです。

二年後には失業者の姿が消えたといいます。お金を借りても利子を払う必要がないので、皆がお金を借りて仕事を始めたのです。町の負債もなくなりましたが、オーストリア国家が介入し、このお金は禁止されました。

この話はシルビオ・ゲゼル信奉者からよく例に引かれ、いまあるお金のシステムのなかで、二次的に導入できる証拠としてよく論じられています。

このお金は時間とともに目減りするので、誰も受け取らないだろうと最初は思われましたが、皆が喜んで受け取りました」

 以上「エンデの遺言」から引用しました。

次回は、私たちが当たり前と思っている貨幣や金融のしくみが「え、こんな馬鹿な話があるものか!」という気持ちが起こる「当たり前の話」を同本から抜粋してご紹介したいと思います。

エンデと地域通貨(3)

投稿者:ノボ村長 エリア:独創研究所

Category: 大切みらい研究所, 村の地域通貨

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