先人の独走的な独創 その1

[ 2 ] 2020年1月21日

今をときめく世界的企業にも試行錯誤の時代がありました。何回かのシリーズで、今や知る人も少ない偉大な先人の数々の独走的独創を私の独断選考により紹介していきたいと思います。

この記事を読んで、先人の恐れを知らぬ果敢な発明のエネルギーに共感するか、もしくは、あの頃、あの人、あの企業でもそういうことがあったのかと、自らをなぐさめるか、それぞれの自由です。私は、これらの試行錯誤や埋もれてしまった発明から、しごとの原点を何か感じ取っていきたいなと思っています。

第一話「独創的原理の国産コンピュータ」

それはパラメトロン計算機といいます。

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1950年代に東大の後藤英一という方が発明したパラメトロンという、いわばコイルだけを素子として製作されたコンピューターです。多くの大学や大手電機メーカーで大型コンピューターとして実用化されました。

http://www.ipsj.or.jp/museum/computer/dawn/0016.html

現在のコンピューターは半導体のトランジスタがベースとなっているのですが、半導体の他に、抵抗器、コンデンサーなど複数素子が構成要素として必要であり、LSI化した現在もその原理はほぼ同じです。しかし、パラメトロン計算機はフェライトコアひとつだけが構成要素なのです。単純きわまりなく製作コストも当時は抜群に安いものでした。

そのままいっていればこれが世界の標準になったでしょう。そうならなかったのは、当時発明されたトランジスタはコンピュータだけでなく様々な家電製品に応用可能であったことと、パラメトロンは消費電力が大きかったいうことが主な原因のようです。

その頃不安定だったトランジスタは、その応用可能性のゆえに多くの技術者が改良にたずさわり、現在の社会のインフラとして発展していきました。パラメトロンはすっかり姿を隠してしまいました。

しかし若い頃、私は日本人が発明した独自の原理で動くコンピューターというものに大変興味を覚え、後藤英一先生の著書「パラメトロン計算機」という本を1980年頃に丸善で買いました。難しくてさっぱりわかりませんでした。でも、失われた技術とはいえ、私も何か誇りに感じることがありました。

家の押し入れの奥にまだこの本があるはずなんですが・・・

投稿者:ノボ村長 (初出:2011.1.13)

 

Category: キラっと輝くものやこと, 伝えたいこと, 工夫したこと

Comments (2)

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  1. くま より:

    なぜか、魅力を感じる。
    この頃は、仕組みが目に見えていただろうから面白かったろうなぁ。

  2. ノボ より:

    そうですね。以前はデジタル信号もhigh、lowとシンクロスコープを見ながら修理したり、アマチュア無線のアンプを作る人は真空管のほんのり明るい光を楽しんだり、リレーの音はカチコチと、時計のような音で異常正常を知らせてくれたり・・・
    ブラックボックスがあまりなかった感じですね。
    車もボンネットを開けることが多く、走る仕組みを実感していましたよね。見たり、聞いたり、触ったりして。

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