川を下る船たち
『川原の石ころ図鑑』なる本を買いました。
日本全国の代表的な川にある様々な石を紹介しています。
川によってこんなに石の種類が違うんだ、とあらためて身近な自然の多様性に驚いてしまいます。
『詩集ノボノボ』より
川を下る船たち
『川原の石ころ図鑑』を開いた
見たことある石がいっぱい
堆積岩、火成岩、変成岩・・・
学校時代の理科や地学の教科書を思い出す
天気がいい日 石ころ観察したいなと思う
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やがて 石ではなくて
川についてのあれこれが
脳裏のスクリーンに現れてきた
私のふるさとの川は 江合川(えあいがわ)
小さい頃は泳いだり魚釣りしたり
遊びのネタがないときは石ケリも
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時代は変わり 川岸には河川公園
土手道は舗装された自転車道
ところが
まわりはいくら変わっても
川は流れ続けている
昔のままに ゆっくりと
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私の生まれ育ったところは
「御蔵場(おくらば)」という地名
昔はここで米を船に積み
石巻まで下ったらしい
上りはどうしたのかといえば
船に長い縄をかけ
土手道から人や馬でひっぱたらしい
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川と船 想像はふくらんでいく
昔のいかだや丸木船
黄河を下るジャンク船
ミシシッピー川を下る蒸気船
さまざまな船が川を下っていった
人の歴史や文明とともに
人のあこがれや欲望とともに
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同じ川をいろんな船が下っていたら
どんなだろう
少し似てるんじゃないか?
社会や人生のありさまと
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ここは空想の大きな川
私が乗っているのは 小さなポンポン蒸気船
まわりにはカヤックや手こぎのボート
ヨットもあるな~
それぞれいろんな工夫や飾りで楽しそう
川岸にも停泊する船や休憩する人たち
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さまざまな船が行き来するこの川は
まさにこの世そのものだ
川に浮かぶ いろんな船は
一人一人の生き方だ
ゆっくりと自然に親しみながら進む船
手作りの操縦を楽しみながら進む船
多くの荷物を積み一刻も早くと進む船
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ふと思いだした
何十年も前 友人と松島湾で
手こぎのボートをこいでいた
そのとき遊覧船がやってきて
大きな波がボートを揺らし
とても怖い思いをした
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この空想の川にも
突然大きな波が立ち始めた
小さな船が大きく揺れて
いっせいに緊張感が走る
鋼鉄の大きな蒸気船が
すさまじい速度で川を進んできたのだ
何隻も何隻も わがもの顔をして
黒煙を上げ汽笛を鳴らしながら
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時代は進む
船はますます巨大化していった
川はもう大きな船だけになってしまった
小さい船はあおられて転覆してしまうのだ
だから今では
みんな大きい船に乗っている
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船員も乗客も
景色がどうであろうと
川や川岸の生態がどうであろうと
一向に気になどしない
気にするのは
いつ河口に着くかと船の料金だけ
自慢するのは
自分が乗っている
船の大きさと 船の速度だけ
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もはや思いだす人などいない
かつてこの川に
様々な船が浮かんでいたこと
川岸からは鳥の声、笑い声が
聞こえていたことなど
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しかし 川は流れ続けている
昔も今も変わりなく
実にゆっくりと
世の中がどう変わろうとも
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