ゲーテ「趣味について」
水木しげるさん最後の著書『ゲゲゲのゲーテ』にいたく感銘し、『ゲーテとの対話』(エッカーマン著)三巻を読みました。
まるで私がゲーテに直接教えてもらっているような親近感を感じます。本書で出会った「深い言葉」からひとつ抜粋します。
岩波文庫『ゲーテとの対話』上巻p140
1824年2月26日「こうして」とそのとき彼はいった、「いわゆる趣味がつくられるのだ。趣味というものは、中級品ではなく、最も優秀なものに接することによってのみつくられるからなのだ。
だから、最高の作品しか君には見せない。君が、自分の趣味をちゃんと確立すれば、他のものを判定する尺度を持ったことになり、他のものを過大でなく、正当に評価するようになるだろう。
私が、それぞれの種類のうちの最高作を見せるのは、どんな種類のものも軽視せずに、偉大な才能がその種類の頂点を示していさえすれば、どんな種類だって楽しいのだ、ということをわかってもらいたいためだ。
たとえば、フランスのこの画家のこの絵は、他のどれよりも粋だ、だからこの種のものの傑作だ、といえる。」
職歴多彩な私は、二十代の頃二年間だけですが画廊に勤務し、多くのすばらしい絵画や美術品と接する幸運を得ました。
だからゲーテの言うとおりだな〜としみじみわかります。
同じことは飲食物に対してもいえます。
もう20年以上も前のことですが、仙台でワインフェスティバルがあり、一本10万円もするようなビンテージワインが特別一杯3千円くらいで試飲することができました。
私が何回も試飲する熱心さに打たれたのか、幸運にもソムリエさんが数センチ残ったそのワインをボトルごと私にくれたのでした。
たしか「シャトー・ムートン」の197?年ものでした。
ビンテージワインの色、香り、味わい、すべてが他のワインとはまったく次元が異なるものでした。
帰宅した私は妻や娘たちに、コルクの香りをかがせ、少量のワインを皆でなめるようにして、その究極的な質を体験させたのでした。
家族はともかく、私自身はそのときにワインというものの質の基準を学んだと実感しました。
(残念なことに、ビンテージワインは今に至るまでその時だけの体験です。。。)
一番良いものを自ら知り、それを子や後輩に体験させるということは最高の「教育」に違いない。
そう感じたゲーテの「深い言葉」でした。
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