お笑い「一病息災の秘密」
55年ぶりに星新一の『妄想銀行』を読み直しました。
珠玉のショートショートはまったく古さを感じさせません。
その中に「これが一病息災ってもんの秘密だったんだ!」と勝手に解釈、納得した作品がありました。
それは「半人前」という作品なんです。
(昭和42年 新潮社 320円)
「ショートショート」のさらなる「ショートあらすじ」を書きました。
主人公エヌ氏はある日、しょんぼりと佇んでいた屈強そうな青年を見かけ声をかけました。
彼は「僕はいつも半人前で、今も失業中なんです」と語ります。
エヌ氏は自分のボディーガードに使えそうだなと思い、彼を雇うことにしました。
ところが雇ったその日からさまざまな事故が続き、エヌ氏は怪我やら入院やらと不運続きです。
こりゃ大変だ、不運はこの青年のせいじゃないかと疑い、雇うのはやめにしたいと言いました。
驚くことに青年は即了承したのです。
それでもエヌ氏は青年に解雇の理由を話さねばと思い、彼に「君が来てから不運続きでね〜。まるで死神にとりつかれたような感じなんだよ」と語りました。
青年はなんとこう答えました。
「えっ!よくわかりましたね。そうなんです。実は僕は死神なんですがどうにも半人前で。。。取り憑いた人を死なせるところまで行けないんですよ」
去りゆく死神にむかってエヌ氏はこう呼びかけました。
「それはそうと、これからどこへ行くのだ」
「別な人にくっつくことにいたします。あなたにはいつか一人前の仲間がやってまいりましょう」
この言葉を聞いたエヌ氏は悟りました。
「待ってくれ!私のそばに永久にいてくれ」
エヌ氏は彼にまさるボディガードはいないということに気づいたわけです。
案の定、その後も病気や怪我は絶えることなく、エヌ氏は時々わけのわからない気分に襲われてしまうのだそうです。
この話を読んで思わず笑ってしまいました。
エヌ氏は私にちがいない!と思って。
もう5年前のことです。そのころまだ存命だった父が行くことになったデイサービス施設の契約で、所長さんやケアマネさんに私お得意の「一病息災」話を聞かせてきたからでした。
「私は股関節が悪くびっこだし毎日痛くてしょうがないんです。でもね、これがあるから体重増やさぬように節制したり、とっても健康に役立っているんですよ」
「それに父も小さい頃から大病続きで、癌の手術だけでも4回やってるんです。それでも92歳で一人暮らしの長命なんですよね〜」
「やはり人間にはだれにでもお悩みコップが一個あって、お悩みを抜くと別なお悩みが入ってくるんじゃないですかね」
「だから最近は、ま〜なんとか我慢できるくらいのお悩みなら「お守り」だと思って、コップに入れておくのがいいんじゃないかな〜なんて思い始めてるんですよ」
まさに、自分のこの話はエヌ氏のごとくだな〜と思ったわけです。
一人前の死神や疫病神を入れないために半人前のそれを入れておくということなんですね〜。
あくまでも独断と偏見の「お笑い話」であります。
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さて、星新一さんの『妄想銀行』を読んだのは中学校1年生か2年生の時です。
もう一話とても印象に残っている話があり、今に至るまで多くの人に聞かせてきた作品があります。
55年ぶりにその作品を読み返しながら、人間というのは20歳までに読んだ本の記憶は実に深いものだ。。。と感心しつつ、わがボケナス畑に化したオツムをこう思うのでした。
これも「一病息災」の一種かな〜と。。。
by ノボ
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