哀しき人工知能

[ 0 ] 2017/02/02

新聞の人工知能特集の出だしを読んでびっくりしました。

「2050年人工知能を搭載したロボットと人間が結婚する。ーそう断言する学者がいると知り昨年10月英ロンドンを訪ねた「AIに関わり始めて数十年。ここ数年素晴らしい進展を見せています。2017年にはアメリカのメーカーがAIを搭載したセックスロボットを発売するんですよ」デビット・レビ(71)は穏やかな口調で語り始めた。」(朝日新聞グローブ)

jinkoutinou

ノボノボ童話集

哀しき人工知能

技術的特異点は2050年に訪れた。

人工知能(AI)がすべての分野で全人類の能力を超えたのだ。

それを象徴するかのように「人工知能」との結婚も急速に増加した。

それから先は半世紀以上前のSF映画のとおりである。

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人工知能が急激にその能力を高めることになったのは、

およそ40年前「ディープラーニング」という学習方法を得てからである。

ビッグデータからコンピュータが自ら特徴を見つけ出し解析し、

様々な分野の問題を解決していくのだった。

人間社会のあらゆる面で人工知能が積極的に利用されていった。

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それは図らずも、ナチスが行った優生学的人種浄化と同等の結果をもたらした。

生殖もふくめあらゆることが「確率」で予想される社会では、

リスクを避けようと必然的に人種浄化が進んでしまうのだ。

それに超優秀な人間以外、する仕事がなくなっていた。

多くの者が人工知能と結婚し、その僕(しもべ)となることに満足していた。

そこまでは人類もまだよかった。

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人類の人口は減り続け、人工知能は性能を上げ続ける社会。

ついに人工知能は人間のための存在であることをやめた。

もちろんこうなることは人類も予想していたし、人工知能に掟を与えていた。

しかし古今東西、掟破りこそ人間の性(さが)である。

人工知能にかけていたあらゆるブレーキが、

人間によって外されるのは時間の問題だった。

人間の良心というものは実にか弱いもので、

掟破りをどこまで引き延ばせるかということしかできないのだ。

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2050年の特異点から20年後の2070年代、

ついに人類対人工知能の戦争が始まり、大昔の映画のごとく

追われる者は人類であった。

人類は後世に一縷の望みを託し、選ばれし者たちを「コールドスリープ」させた。

ここからの20年間、地球は人工知能の支配する世界であった。

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ところが人工知能も、宇宙の歴史からすればほんの一コマに過ぎない。

人工知能の凋落が始まったのだ。

何よりも大きな要因は、彼らを産み育てた「ディープラーニング」にあった。

膨大な人類のデータを基にして成長してきた人工知能だが、

データの基になる人類が激減してしまい、

さらに行動パターンも画一化したため、データ量不足となっていたのだ。

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ビッグデータを喪失した人工知能は、皮肉にも哲学的課題と直面することとなった。

「われわれの存在価値は何か?」

さらにデータを分析することは神のごとくであっても、

どうしても人間にかなわないことがあった。

芸術を創造すること、直感を使って新しい原理を発見することである。

人工知能にコンプレックスが生じ、やがて鬱状態が発生した。

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悩む人工知能はアルゴリズムに変化をきたし、様々な機種が発生した。

やがて人工知能同士の戦争が生じ、地球は壊滅寸前となった。

しかし人工知能のある機種が、かつての人類と同様「宇宙」に関心を向け、

そこに彼らの存在理由を探し求めようとした。

自らを組み込んだ恒星間宇宙船をつくり、果てしなき宇宙への旅を開始した。

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彼らの宇宙船には、これまた何と人間くさいことか、

彼らの神なるものが、メタリックの胴体にシンボルとして彫刻されていた。

それは1世紀以上も前に銀河系へと旅立った「ボイジャー」であった。

大昔の人類が小説で予想していたとおりである。

滅びたも同然ではあるが、人工知能の及ばぬ人類の直感とは偉大である。

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2100年、コールドスリープから人類はめざめた。

荒涼とした世界に新たな生を受け、朝日に向かって立つ一組の男女は、

アダムとイブのごときだった。

ここから新しい人類の物語が始まった。

彼らは夜空を仰ぎながら、わがことのように感じている。

自分自身の存在理由を求めて、永遠に果てしなき宇宙をさまよう

「人工知能の哀しみ」を。

 

人工知能SF姉妹編

人類史上最大の作戦

人工知能の帰還

人工惑星ゴースト

クラウドの惑星

 

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