ためになるゲーテの言葉

[ 0 ] 2018年2月19日

生活の原動力は自然の繰り返しにある

ゲーテの自伝『詩と真実』を時々ですが読み進めています。

今、全4巻中の3巻目を読み終わろうとしていますが、『若きウェルテルの悩み』執筆の動機とその頃のゲーテの状況が詳しく書かれています。

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ゲーテはあらゆる著書で、彼の思想の源泉が『自然』に存することを述べています。

『ゲーテとの対話』では「私たちの主観など取るに足りないものであり、対象より重要なものはない」と語っていました。

現代において「人生の意義とは自己実現である」ということに誰も異議を挟む人はいないでしょう。

しかし自然そのもの、自然の一部としての自分という意識がない自己実現とは狭量な「自己陶酔」でしかありません。

それは私たちに憂鬱を生じさせ、はては自殺にまで至らしめることがあるのだとゲーテは語っています。

岩波文庫ゲーテ『詩と真実』第三巻 p214

 人生における快適さはすべて、外的な事物の規則正しい繰り返しにある。

 昼と夜、季節、開花と結実の交替、その他、われわれが楽しむことができ、またわれわれを楽しませるように、季節ごとにわれわれに現れてくるもの、これらが地上の生活の本来の原動力である。これらの喜びにわれわれの心が開かれていればいるほど、われわれはより多くの幸福を感じる。

 しかしこれらの多様な現象がわれわれの前で生起するのにたいして、われわれが何の関心ももたず、われわれにあたえられるかくも快きものを感受しなくなるとき、最大の不幸、最悪の病が現れる。人生が厭うべき重荷と思えてくるのである。

 あるイギリス人が、毎日服を着たり脱いだりしなくてもいいように首を吊ったという話がある。大きな公園の管理人をしていた有能な園芸家を知っているが、その人はあるとき腹を立てて「いったいなんだって明けても暮れても雨雲が東から西へ流れていくのを見ていなけりゃならんのだ」と叫んだ。

 わが国のもっともすぐれた人物の一人であるある人は、春がくるとまた緑に変わるのを見て腹を立て、一度ぐらい赤に変わったらどうなんだ、と言ったということである。

 たしかにこれは人生倦怠の兆候であり、自殺に至ることも希ではない。思索的、内省的な人にあっては、一般に考えられているよりもそれは多いのである。

ゲーテは高所から他人を見下ろしてこのようなことを書いているわけではありません。

彼自身、若き頃は二度も自殺に傾きかけていたのです。

『若きウェルテルの悩み』執筆の少し前もそうでした。

自殺しないですんだのは、彼の生来持つ『自然』に対する豊かな感受性と、自らの懊悩を文学作品の執筆によって昇華させようと決心したことゆえでした。

 ・・・われわれがここで問題とするのは、本来活動に欠け、世にも平穏な境遇にあって、自分に過大な要求を課することによって人生嫌悪におちいったひとびとのことなのである。

 私自身そうした羽目におちいり、そのためいかなる苦痛を味わったか、それから逃れるためにいかなる労を費やしたかは、私がいちばんよく知っているのであるから、人の選びうるさまざまな死に方について熟慮を重ねた考察を、包まず述べておくことにする。

 ・・・私はかなり多数の武器を集めていたが、その中に一振りの高価な鋭い短刀があった。私はこれを常にベッドのわきに置き、灯りを消す前に、その鋭い切先を二、三インチ突き刺せないものか試してみた。

 しかしこれは決して成功しそうになかったので、結局自ら嘲笑し、あらゆる憂鬱病的愚行を放棄して、生きることに決めた。

 しかし明るく生きてゆくためには、詩人としての課題を果たし、この重要な問題について感じ、考え、妄想してきたすべてを言葉に表さなければならなかった。

ゲーテのこのような心境を知って『若きウェルテルの悩み』を読み返していますが、最初読んだときとは全く違う「深さ」をあらゆるページに感じとることができ、偉人ではなく悩む人間としてのゲーテに親しさが増してきます。

参考→「ゲゲゲのゲーテ」より抜粋
ゲーテ「趣味について」
ゲーテ「わが悔やまれし人生行路」
ゲーテ「嫌な人ともつきあう」
ゲーテ「相手を否定しない」
ゲーテの本を何ゆえ戦地に?
ゲーテ「私の作品は一握りの人たちのためにある」
ゲーテ「好機の到来を待つ」
ゲーテ「独創性について」
ゲーテ「詩人は人間及び市民として祖国を愛する」
ゲーテ「若きウェルテルの悩み」より抜き書き
ゲーテ「自由とは不思議なものだ」
ゲーテ「使い尽くすことのない資本をつくる」
「経済人」としてのゲーテ
ゲーテ「対象より重要なものがあるかね」
ゲーテ「想像力とは空想することではない」
ゲーテ「薪が燃えるのは燃える要素を持っているからだ」
ゲーテ「人は年をとるほど賢明になっていくわけではない」
ゲーテ「自然には人間が近づきえないものがある」
ゲーテ「文学作品は知性で理解し難いほどすぐれている」
ゲーテ「他人の言葉を自分の言葉にしてよい」
ゲーテ「同時代、同業の人から学ぶ必要はない」
ゲーテ「自分の幸福をまず築かねばならない」
ゲーテ「個人的自由という幸福」
ゲーテ「喜びがあってこそ人は学ぶ」

Category: キラっと輝くものやこと, 伝えたいこと, 大切みらい研究所, 新しい生き方

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