ビックリ仰天!時計の話
世の中は実に知らないことだらけです。「時計」にまつわる面白い話をふたつご紹介します。日頃私たちがせかされ続けている「時間」ですが、こんなおもしろ時計話には「ホッ。」とさせられます。
ネタ元は『愉しい非電化』という本。
「非電化工房」、「三万円ビジネス」の藤村靖之先生の著書です。
→「非電化工房」見学会
<温度差をエネルギーにして動き続ける時計>
ゼンマイを巻かないでも、錘を吊り上げないでも、永久に動き続ける時計というものも存在します。スイスの高級時計メーカー、ジャガー・ルクルト社が1928年に発表したアトモスという温度差時計です。
この時計は周囲の温度差をエネルギーにして動き続けます。300∝ほどの金属のドラムには空気が閉じ込められていて、周囲の温度が変化すると空気の温度も変化して膨張・収縮します。特殊なべローズ(蛇腹)でこの膨張・収縮を直線運動に変え、それを回転運動に変えてゼンマイを巻くという仕組みなのです。
写真が温度差時計アトモス(筆者所蔵)。
このアトモスは、1日に1℃の温度差があれば2日間は動き続けるという、「精密技術の極み」といってもよさそうな作りです。いちばん安いモデルでも40万円以上、いちばん高いモデルは2000万円といいますから、値段も半端ではありません。「1日に1℃の温度差で2日」というのは、にわかには信じがたいことですが、アトモスを入手して確かめてみたら本当でした。
人が作ったものに感心しているばかりでは発明家の名が廃るので、私も温度差時計を発明してみました。私の発明品は1日3℃くらいの温度差がないと2日間は動き続けませんが、「アバウトの極み」だから、3~4万円くらいで提供できそうです。
仕掛けは簡単です。熱膨張率の違う金属を2枚重ねることで、温度によって片側に反り上がりが起こるバイメタルを5周くらいのゼンマイ状にし、いちばん外側は固定して、中心側は回転自在にしておきます。温度差が生じると中心側は左右に回転しますが、右回転のみをラチェット機構を介してゼンマイに伝えて巻き上げます。あとは普通の機械式時計と同じで、テンプを使って精度を保ちます。これで、何もしなくても永久に動き続けます。
<今も健在!時計のねじ巻き屋さん>
余談ですが、時計のねじ巻き屋さんが新潟県加茂市にいるそうです。2003年2月10日付の『朝日新聞』(夕刊)「信頼のねじ巻き屋」という記事で、中林信治さん(84歳*)が紹介されていました。
加茂市は桐ダンスの生産で知られる人口3万3000人の町。記事によれば、中林さんの店は105年ほど前にお父さんが加茂市で創業した時計屋で、お得意さんの時計の出張ねじ巻きを、終戦の翌年からずっと続けているのだそうです。得意先は多いときは600軒ほどありましたが、最近は高齢のために100軒くらいに絞っていて、週に3、4日出かけていってねじ巻きをしているそうです。
古い時計は8日巻きが多いので、照ろうが降ろうが8日以内に脚立を担いで出かけていきます。58年間で休んだのは洪水のときと自動車事故に遭ったときの1週間だけで、ねじ巻きのついでに時刻合わせや調整までして、料金は半年で2000円程度とのことでした。中林さんが引退すれば、古時計はたちまち使われなくなるかもしれない。町の人は、少しでも長く仕事を続けてもらいたいと願っている、と記事はまとめられていました。
物を大切に使い続けることを忘れがちな現代人にとって、この記事は大事なことをしみじみと教えてくれている気がします。
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(ノボ注)
*→当時
少し新しい記事、2008年の様子が下記のブログで紹介されていました。
http://www.ohbsn.com/otakara/2008/06/post_61.html
現代の科学では無理とされている「永久機関」(みたいなもの?)も、昔にレトロなしかけで存在し、時計のねじ巻きという信じられないレトロな商売が今でも存在している。。。
なんともこの世は信じられないことばかりです。もしかして「現代」と「過去」と「未来」は重なり合って存在しているのでしょうか?
水木しげる先生に聞いてみなくては。。。
参考
藤村先生の著作です。
なかでも「テクテクノロジー革命」はこれからの社会の指針を示してくれています。
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投稿者:ノボ村長 エリア:キラこと 投稿日:2012.2.22
Category: おもしろいこと, キラっと輝くものやこと, 工夫したこと