鬼退治したくない桃太郎
朝日新聞にこんな記事が。
桃太郎と鬼、話し合いで和解 解決法考えるDVD製作中
鬼退治したくない桃太郎が選んだ道は――。創作話を通じて、もめ事を建設的に解決する方法を子どもにも伝えようと、若者たちがアニメDVDの製作を始めた。両親の離婚や級友との仲たがい。製作は若者自身にとっても、争いと無縁ではいられない日常を振り返るきっかけになっている。
9月上旬、東京・神宮前のマンションの一室。ウェブデザイナーの林綾美(リン・ルンミ)さん(27)と映像クリエーター渡辺健一さん(25)が、手作りの人形を動かしながら、デジタルカメラで撮影をしていた。レンズの先では、桃太郎と犬・猿・キジ、鬼たちが車座になっている。
アニメ「鬼退治したくない桃太郎」の一シーンだ。撮影した1万数千枚の写真を、パラパラ漫画のようにつないで絵を動かす。
製作は、映像ディレクター高部優子さん(43)が企画した。当事者だけでなく家族、友人らが集い、長老を中心に対話を重ねるハワイの伝統的な紛争解決法「ホーポノポノ」(ポリネシア語で「曲がったものをまっすぐに直す」)を紹介する。
高部さんは、戦争被害や戦後和解を主題に映画を撮ってきた。戦争を起こさない方法を問われて答えられない自分に気づき、2008年から2年間、紛争を暴力によらず解決する理論を学ぶために大学院へ。「暮らしのなかのもめ事や争いを当たり前ととらえたうえで、習得可能な解決法を伝えることが大切だ」と考えるようになった。理論を踏まえ、在学中に仲間たちとシナリオを練り上げた。
物語では、鬼になぜ畑を荒らすのかをたずねようと、桃太郎が鬼が島に向かったものの、逆に出会った子鬼から、人間が石を投げつけてくる理由を問われる。きび団子から突然「先生」が現れ、ホーポノポノの長老さながら、両者とともに和解を導く。
製作に携わるのは、20~30代の約10人。高部さんと旧知の林さんは、物語に自身のこれまでを重ねている。過労で倒れた母と、病に理解を示さない父との家庭内別居を解消しようと、伝言役として2人の間を行き来した中学・高校時代。親族が南か北かで分裂するなか、在日コリアンとして受けた生。「どうにかしたいけれど、どうにもできない自分がいたことを、今さらながら感じた。落ち着いたら紛争解決学を学びたい」と話す。
大分県出身の渡辺さんは、1学年1クラスの小学校でいじめたり、いじめられたりしたことを思い出した。「理論だけで現実のすべてがうまくいくとは思わないけれど、知っておくことが冷静でいるための心構えになると思った」
DVDは計約25分の3話構成。ほかの2話で、「私メッセージ」と呼ばれる対立を深化させないコミュニケーション術や、元オスロ国際平和研究所長が提唱した「トランセンド(超越)理論」に基づく解決の導き方も紹介する。取り組みに賛同した「虫プロダクション」(本社・東京)が製作を支え、平和学や教育学の研究者、弁護士らが協力を呼びかける。
11月中に完成させる予定で、協力金(上映権付き、1万円)を出した人に、理論などを解説したブックレットと合わせて渡す。来年には「平和文化」(本社・同)からの出版も予定。問い合わせは、平和アニメーションプロジェクト(03・3403・1902)へ。(隅田佳孝)
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■アニメで紹介する紛争解決法
【ホーポノポノ】
(1)当事者それぞれの立場から見て何が起きたのか、第三者を交えて照らし合わせる
(2)それぞれが意図的にした行為に目を向け、なぜ対立が起きたのかを探る
(3)できたはずなのにしなかった責任を分かちあう
(4)どのような将来を作りたいのか話し合う
(5)紛争の終結を宣言する
【私メッセージ(対立を深化させない方法)】
(1)主語を「私」にして自分の気持ちを素直に表現する。「○○してもらえると助かる」「○○されるととても悲しい」など
(2)「どうして○○なの」という「あなた」主語の話し方(あなたメッセージ)を控える
(3)提案と傾聴を意識する。「○○して欲しいのに」の主語は一見「私」だが、「なぜ○○してくれないのか」という不満を伝える「あなたメッセージ」になっているので注意
【トランセンド理論】
当事者双方の間で妥協点を見いだすのではなく、第三者の仲介・調停によって新たな解決法を求めようとする考え方。たとえば、2人がバナナ1本をめぐって争っている場合。バナナを半分にすれば2人とも食べられるが、満腹にならず不満が残る。小麦粉を加えてバナナケーキにすれば、2人とも満腹になるし、バナナも味わえる
投稿者:nobo エリア:キラこと 投稿日:2011.10.7
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