一行の詩と一葉の写真
「余白は語る」でしょうか。右頁には詩の一行だけ、左頁には一葉の写真だけ。抑制した構成が深い感動を与えてくれます。
『生きる』という詩画集(ナナロク社)にとても心を動かされました。
谷川俊太郎さんの詩「生きる」と、松本美枝子さんの写真との、静謐(せいひつ)なコラボ作品です。
「生きる」の詩一行ごとに、さらにその一行と響きあう写真一葉ごとに、左右の頁を与えている本なのです。
後書きには、写真家松本さんのこの本に対する個人的なきっかけと深い思いが述べられています。
2008年1月1日、写真家の友人が、撮影中に倒れて突然死んだ。雑踏の中で、カメラを二台抱えたまま。その前月、偶然お互いに日本カメラという雑誌から撮影依頼があり、ある特集を彼と分担して撮影したのだが、それが私たちの最後の共同作業となった。
(中略)
生きていくことは気が遠くなるほど面倒くさい。耐え難いこともある。でもその瞬間をくぐっていくうちに、それ以上の喜びや輝きを見つけることもできる(例えば、落ちこぼれで、授業中に詩集ばかり読んでいた女子高生が、のちに写真家となって大好きなその詩人と実際に会えたように。)
この世界の誰もが、きっと、そうなんだと思う。そして世界は、誰にとっても、そうできているはずだ。それをいつでも思い出せるように、この本を作りました。
2008年 冬 松本美枝子
松本さんの後書きを読んで、彼女の亡き友人がまるで私の友人でもあったような気になりました。
それと彼女とのコラボを実現してくれた、彼女がとても好きだったという谷川俊太郎さんの慈父のような温かさも感じました。
さらに谷川俊太郎さんの後書きを読みながら、「写真とは詩であるな~」と強く感じました。
・・・詩は小説と違って、時間に沿って物語を語らないでも成り立つことを特徴としています。詩はいわば時間を、そして歴史を輪切りにしてその断面を見せるのだと、私は考えています。
(中略)
空間・時間は、それが一瞬であっても計り知れないほど深く大きく、それを感じたときの心を、日本人は「もののあはれ」という美しい言葉で表現することがあります。この「生きる」という本では、写真が言葉とともに現実の一瞬を切り取り、それをただ提示しています。
この本は生きることの「意味」とともに、その複雑な「味わい」を読者に感じてほしいと願っているのです。
2008年 冬 谷川俊太郎
詩人の文章というのはちがいます。。。
タイプしながら、なんともいえず心が洗われていくようです。。。
詩の全文はこれです。(読みにくい場合はクリックしてください)
このような形式の画文集を私も創りたいな~と思いました。
いつか、「みんなの独創村」や「あったかギャラリー」で企画したいものです。
投稿者:ノボ村長
Category: キラっと輝くものやこと, 美しいこと