木は旅が好き
先日、大和町の自然派カフェ「デコイ」に行って来ました。
午後2時半過ぎだったので、人気のこの店でも客は私一人。
おかげで、マスターと広い敷地の立派な樹々を眺めながら、いろんな話ができました。
マスターは、この広大な敷地の手入れが楽しくてしょうがない、できるなら自分もブナの木になりたいものだ、と語っていました。
話をしながら、なぜか私も同じ気持ちになってしまいました。
詩人の茨木のり子さんも、どうやら同類?みたいです(笑)
茨木のり子『倚リかからず』より
木は旅が好き
木は
いつも
憶っている
旅立つ日のことを
ひとつところに根をおろし
身動きならず立ちながら
花をひらかせ 虫を誘い 風を誘い
結実を急ぎながら
そよいでいる
どこか遠くへ
どこか遠くへ
ようやく鳥が実を啄(ついば)む
野の獣が実を噛(かじ)る
リュックも旅行鞄もパスポートも要らないのだ
小鳥のお腹なんか借りて
木はある日 ふいに旅立つ ーー 空へ
ちゃっかり船に乗ったのもいる
ポトンと落ちた種子が
<いいところだな 湖がみえる>
しばらくここに滞在しよう
小さな苗木となって根をおろす
元の木がそうであったように
分身の木もまた夢みはじめる
旅立つ日のことを
幹に手をあてれば
痛いほどにわかる
木がいかに旅好きか
放浪へのあこがれ
漂泊へのおもいに
いかに身を捩(よじ)っているのかが
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