「嫌われる勇気」と私たち
実は、私は「自己啓発本」というものが、安っぽいノウハウ本みたいに感じられて好きになれないんです。
しかしこの本は、著者がギリシャ哲学を研究する哲学者であるせいか、深くてとてもためになりました。
それにプラトンが書いたソクラテスの対話のごとく、哲人と青年の対話形式になっているので、とても読みやすい本でした。
この本はアドラーという心理学者の学説を基にして書かれています。
アドラーという方はフロイトの共同研究者であったのですが、後に別れてフロイトの学説とは反対に近い「個人心理学」を提唱した有名な心理学者とのことです。
フロイトとその弟子であったユング、そしてアドラーが「心理学の三大巨頭」と称されているのだそうです。
アドラーの心理学はきわめてシンプル、具体的、積極的で「道は開ける」「人を動かす」の著者D.カーネギーなどに強い影響を与えたそうです。
・・・・・・・・
さて私は最近の政治状況や社会状況に「なぜこうなってしまうんだろう。。。」と歯がみすることがとても多くなっています。
最近では、為政者に対する「過剰な忖度(そんたく)」がとても目立ちました。
この本を読んで、その原因が多分に(大人である)私たち一人一人の心理学的問題であることに気づきました。
つまり「嫌われることを極端に怖れる心理」です。
そのように考えさせられた文章がありましたので、抜粋して引用します。
ほんとうの自由とはなにか
哲人 何度もくり返してきたように、アドラー心理学では「すべての悩みは、対人関係の悩みである」と考えます。
つまりわれわれは、対人関係から解放されることを求め、対人関係からの自由を求めている。
しかし、宇宙にただひとりで生きることなど、絶対にできない。
ここまで考えれば、「自由とはなにか?」の結論は見えたも同然でしょう。
青年 なんですか?
哲人 すなわち、「自由とは、他者から嫌われることである」と。
青年 な、なんですって!?
哲人 あなたが誰かに嫌われているということ。
それはあなたが自由を行使し、自由に生きている証であり、自らの方針に従って生きていることのしるしなのです。
青年 い、いや、しかし・・・。
哲人 たしかに嫌われることは苦しい。
できれば誰からも嫌われずに生きていたい。
承認欲求を満たしたい。
でもすべての人から嫌われないように立ち回る生き方は、不自然きわまりない生き方であり、同時に不可能なことです。
自由を行使したければ、そこにはコストが伴います。
そして対人関係における自由のコストとは、他者から嫌われることなのです。
青年 違う! 絶対に違う!
そんなものは自由なんかじゃない!
それは「悪党になれ」とそそのかす、悪魔の思想だ!
哲人 きっとあなたは、自由とは「組織からの解放」だと思っていたのでしょう。
家庭や学校、会社、また国家などから飛び出すことが、自由なのだと。
しかし、たとえ組織を飛び出したところでほんとうの自由は得られません。
他者の評価を気にかけず、他者から嫌われることを怖れず、承認されないかもしれないというコストを支払わないかぎり、自分の生き方を貫くことはできない。
つまり自由になれないのです。
青年 ・・・先生は、わたしに「他者から嫌われろ」と?
哲人 嫌われることを怖れるな、といっているのです。
哲人 独善的に構えるのでもなければ、開き直ることでもありません。
ただ課題を分離するのです。
あなたのことをよく思わない人がいても、それはあなたの課題ではない。
そしてまた、「自分のことを好きになるべきだ」「これだけ尽くしているのだから、好きにならないのはおかしい」と考えるのも、相手の課題に介入した見返り的な発想です。
・・・もしわたしの前に「あらゆる人から好かれる人生」と「自分のことを嫌っている人がいる人生」があったとして、どちらか一方を選べといわれたとしましょう。
わたしなら、迷わず後者を選びます。
他者にどう思われるかよりも先に、自分がどうあるかを貫きたい。
つまり、自由に生きたいのです。
青年 先生はいま、自由ですか?
哲人 ええ。自由です。
青年 嫌われたくはないけど、嫌われてもかまわない?
哲人 そうですね。
「嫌われたくない」と願うのはわたしの課題かもしれませんが、「わたしのことを嫌うかどうか」は他者の課題です。
私をよく思わない人がいたとしても、そこに介入することはできません。
むろん、先に紹介したことをことわざでいうなら「馬を水辺に連れていく」ところまでの努力はするでしょう。
しかし、そこで水を呑むか呑まないかは、その人の課題なのです。
青年 なんという結論だ。
哲人 幸せになる勇気には「嫌われる勇気」も含まれます。
その勇気を持ちえたとき、あなたの対人関係は一気に軽いものへと変わるでしょう。
この後、「叱ってはいけない、ほめてもいけない」「普通であることの勇気」など刺激的な章がたくさん続きます。
自分自身の今までを実に反省させられました。
と同時に、私もささやかな「勇気」をいただいたような感じがしました。
実に、「読む価値あり」の本であります。
さ〜! 私たちも(ほどほどに)「嫌われる勇気」を持って、権力に媚びず、群れに埋没せず、爽やかに生きていきましょうよ!
by ノボ
Category: キラっと輝くものやこと, 大切なこと