茨木のり子「友人」

[ 0 ] 2020年10月13日

今67歳の私ですが、年年人付き合いが減ってきて、友人と呼べるのは10人に満たなくなりました。

酒飲みしなくなったからかな〜。でも「それで十分ですよ」と、茨木のり子さんの詩が諭してくれました。

この詩は彼女が四十五歳頃の作品のようです。

その歳で達観してたわけですね〜。

彼女の詩には「一人で生きる気概」を感じさせる作品が多く、私自身とても心の支えになります。

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茨木のり子「自分の感受性くらい」より

友人

友人に
多くを期待しなかったら
裏切られた! と叫ぶこともない
なくて もともと
一人か二人いたらば秀

十人もいたらたっぷりすぎるくらいである
たまに会って うっふっふっと笑いあえたら
それで法外の喜び
遠く住み 会ったこともないのに
ちかちか瞬きあう心の通い路なども在ったりする
ひんぴんと会って
くだらなさを曝けだせるのも悪くない
縛られるのは厭だが
縛るのは尚 厭だ
去らば 去れ

ランボウとヴェルレーヌの友情など
忌避すべき悪例だ
ゴッホとゴーギャンのもうとましい
明朝 意あらば 琴を抱いてきたれ
でゆきたいが
老若男女おしなべて女学生なみの友情で
へんな幻影にとりつかれている

昔の友も遠く去れば知らぬ昔と異ならず
四月すかんぽの花 人ちりぢりの眺め
とは
誰のうたであったか

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