実在する「争いがない社会」
アフリカはタンザニア奥地に住むハザ族は石器時代から今も変わらぬ生活を続けているそうです。
驚くことに彼らはその歴史において一度も争ったことがないのだそうです。
諸子百家に「性善説」と「性悪説」があります。
「性悪説」の人たちはこのように考えます。
「人の本性、世界の根本は弱肉強食、だから戦いが絶えることなどありえないのだ」
私は世の中が「性悪説」オンリーとは思えません。
しかし、正直「性善説」だけで成り立つ社会も、古今東西ないだろうと思っていました。
ところがさにあらず!
『137億年の物語』という本で紹介されていました。
アフリカに住む「ハザ族」という狩猟民族の社会こそが、まさに「性善説」そのものの社会として実在していたのです。
驚くことにこのハザ族は、ひっそりとはいえ、私たちと同じ時間を今このときも過ごしているのです。
(読みやすいように小見出しを付けました)
『137億年の物語』」p129-130
「現代の狩猟採集民の生活」より一度も争いがなかった社会
アフリカはタンザニアの奥地にハザ族という狩猟採集民がいる。ごく最近まで彼らは、森の中で野生動物を狩り、果物や野いちごを採集し、移動しながら豊かな生活を送っていた。しかしその人口は、2006年までに、わずか2000人に減ってしまった。侵入してくる農民や、都市化の波に押されて、低木が生えるだけの狭い土地に追いやられてしまったからだ。その歴史において一度も争ったことのないハザ族は、侵略してきた農民や町の住民と戦おうとせず、豊かな狩り場を手放し、いばらが生い茂る小さな森に引きこもってしまった。今はそこで、現代社会から身を隠すようにして暮らしている.
身軽な生き方が可能にする「助け合い」
ハザ族は、個人では何も所有せず、すべてを共有する。最近、こんな話が報告された。めったにないことだが、ハザ族のひとりの男が外部の人間にガイドとして雇われ、観光客を奥地に案内した。ガイド料を受け取るときになると、部族の全員が出てきて、そのお金を分けあったそうだ。現代社会は、秩序、統制、法律、警察、役人、規則、指導者といったものに依存しているが、ハザ族は、知性と協力のみを頼りに、運営しやすい小さな集団で暮らしている。なにごとにも柔軟に対処し、喜んで助け合うことが、生き残るための鍵であり、それを可能にしているのは、何も持たず、決まったすみかもないという、彼らの身軽な生き方なのだ。
石器時代から続く暮らし方
一部の専門家は、ハザ族の言語、少なくともその形態は、石器時代の初期の言語に近いのではないかと考えている。ハザ族の言語はほとんど舌打ち音で構成され、母音や子音を用いる通常の言葉とはまったく異なっている。舌打ち音は、とりわけ狩りの最中にその威力を発揮する。舌打ち音なら、獲物に気づかれることなく、遠くの仲間と情報を伝達しあうことができるのだ。
最近の研究により、ハザ族の遺伝子構成は、これまで研究されたどのグループより多様であることが判明した。遺伝子は世代を経るごとに一定のペースで多様化していくので、多様であればあるほど、その血統は歴史が古いということになる。専門家は、ハザ族の系統が他の人類から分かれたのは、ホモ・サピエンスが誕生して間もないころだったと考えている。つまり彼らは、ホモ・サピエンスの最初期から続いている系統なのだ。しかし、じきに彼らのような古来の種族は現代世界に吸収され、その系統は永遠に失われてしまうことだろう。
能率がいいから何もない
ハザ族の暮らしの注目すべき点は能率がいいということで、石器時代の生活についても同じことがいえるだろう。食料の採取や調理には全員が関わり、食べ物が運ばれてくるのを座って待っているような支配者や集団は存在しない。貨幣も銀行もローンも賃金もいらないし、会計士も弁護士も商人も税務署もいらない。書類も電気も不要で、2本の足の他は、移動手段も必要としない。
森の恵みとともに生きてきた
ハザ族は森の動植物に精通しており、だれもが、食べられるものとそうでないものを見分けることができる。また、薬草で病気などを治す方法は、何百世代にもわたって口伝されてきた。現代の医薬品もそのほとんどは自然界にある成分でできている。ハザ族の人々は、石器時代の人と変わらないほど無学だが、薬草や植物を用いた治療法については、並外れた知識を持っており、博識な薬学者でもかなわないほどだ。
狩猟採集民の神話、あるいは宗教の根底にあったのは、自然界のあらゆるものに対する深い尊敬の念だった。彼らの目に映る森は、神秘と驚きに満ちていた。森には先祖の霊が宿り、現世にいる者を守り、導き、いやしてくれると彼らは信じていた。また、森は、食料、温かさ、住まい、薬、避難場所を提供してくれた。森を守ることは何より大切だった。彼らは森の豊かさと、その資源が途絶えないことを信じていた。
移動生活が人口抑制を可能にした
長い目で見たときに、狩猟採集生活の強みとなるのは、自ずと人口がコントロールされるということだろう。徒歩で移動する彼らは、子どもを何人も抱えて運ぶことができなかったので、出産間隔を開ける必要があったのだ。狩猟採集民は何万年にもわたって500万人ほどの人口を維持し、その数が著しく増えることはなかった。この数は、移動生活を送りながら維持できる人口の上限だった。
本文にあるように「現代の医薬品もそのほとんどは自然界にある成分でできている。」
インフルエンザの季節となりましたが、特効薬タミフルも「八角」という野生植物を基にして創られた薬だそうです。
私たち人類を生かし、救っているのは「自然」です。
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私たちの「希望の種子」は、今私たちが暮らす「都市社会」にあるのではなく、自然と調和して暮らすことを選んだ「忘れ去られた社会(未開社会)」にこそあるのではないでしょうか。
私たちは、あまりに「世界」を知ったかぶりし、「私たちの歴史」というものを過大評価しすぎているような気がしてなりません。
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数日前に引用した、茨木のり子さんの詩「問い」の一節が浮かんできます。
「みんなも ひとしなみ 何かに化かされているようで」
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※写真は「ナショナル・ジオグラフィック」より借用しました。→ハッザ族太古の暮らしを守る
by ノボ村長
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