ノボノボ童話集「人生相談の達人」
「なぜ?」は人間ならではの言葉でしょう。しかし、その「なぜ?」が自分を傷つけてしまう場合もあります。当たり前であることにも「なぜ?」と問えばどうなるだろう?自分自身のセラピーとして書いてみました。
ノボノボ童話集
人生相談の達人
隣の町に「人生相談の達人」がいるという。
親しい友人数名が実際に相談したらしい。
その効果を聞かされた彼は疑った。
彼は理屈の通らないことが大嫌いな性格だった。
そこで達人の家の前で観察を始めることにした。
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最初に達人の家に入ったのは、
足が不自由で痛そうに歩く男。
入るときはつらそうな顔をしていた。
たった数分後、男は笑ってその家から出てきた。
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次に入ったのは子どもを連れた女性。
子どもは小学生くらいだが、
少しネジがゆるんだ感じの子だ。
やはり数分後、母親は微笑んで
子どもを抱きしめながら出てきた。
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三人目はいかにも貧しそうな男。
体はやせ細り、栄養が足りないようだ。
この男も数分後には、
晴れやかな顔でスキップしながら
達人の家を出てきた。
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彼はキツネにつままれたような気がした。
もしかして催眠術か?と思った。
好奇心旺盛な彼はそれを確かめるべく
彼らを追いかけた。
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晴れ晴れとした顔の彼らに聞いてみた。
「大変失礼ではありますが、
お悩みの内容はだいたい想像できます。
しかし、数分でお悩みがなくなるとは、
達人はいったいどんな回答をされたのですか?」
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三人が話す内容は同じようなものだった。
しかも、おどろくほど単純なものだった。
このような会話がなされただけらしいのだ。
三人の相談はみな、縮めていえばこうなる
「なぜ私は不幸せなのでしょう」
人生相談の達人はそれぞれにこう聞いたらしい。
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足の悪い人には、
「なぜ、両手や片足はまともなのでしょうか?」
子どもが不憫な母親には、
「なぜ、この子は普通に生きているのでしょうか?」
貧しそうな男には、
「なぜ、ここに来るファイトがあるのでしょうか?」
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理屈っぽい彼だが、妙に納得できた。
そう言われりゃ、たしかにそうだよな、と。
ノボノボ童話集
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→「美しき誤解」
→「サンタの過去」
→「車のない未来」
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