ナマズは味覚で地震を予知する?
愛情表現とされている「キス」は、もしかしたら毒見なのかもしれません。この相手はヤバイかそうでないかを知るための。(映画「スピシーズ」のごとく)
アメーバなどの原始的生物から私たち人間に至るまで、「動物」として必ず備えている器官は「舌」にあたるものだそうです。
危険か安全かを知るために生き物が最初に獲得した器官が「味覚」(「嗅覚」も含まれる)を感知する化学受容器なのだそうです。
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ところで魚の味覚センサーはほとんどが「体表」に分布しているらしいのですが、その中で「ナマズ」は別格のようです。
通常の魚類の味覚センサー(味蕾)が約200個に対し、ナマズはなんと!20万個もあるのだそうです。
しかもその多くが「ヒゲ」に集まっているとのことです。
そのためナマズは遠くにいる小魚の臭いと方向までわかるのだそうです。
ナマズが「地震の予兆を感知する」のは、まさにこの味覚センサーゆえの特殊能力のようです。
自然界はまったく想像を絶する多様で豊かな世界です。
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そんなことを『図解 感覚器の進化』という本で知りました。
『図解 感覚器の進化』より
最初に「世界」を仕分けた化学受容器
動物とはすなわち「もの喰う」生き物である。
たった一つの細胞しかない単細胞生物から、私たちヒトまで、動物は自分以外の生き物から栄養を取り入れなければ生きていけない。
ものを喰うとは、すなわち自分以外の「他者」を体内に取り入れる行為にほかならない。
この行為には、つねに危険がつきまとう。
自然界には植物が身を守るために蓄えた毒や、腐敗といった見えざる危険が潜んでいるからだ。
しかし動物は、口に入れたものにおかしな昧がすると、即座に吐き出すという行動をとる。
「味覚器」が「おかしな味」は毒であることを瞬時に判断し、体にすばやい反応を起こさせるのである。
つまり味覚器、いわゆる「舌」の最も重要な役割は「毒見役」を務めることである。
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一方、私たちヒトは、舌を楽しむために活用して、よりうまいものを追求することに血道を上げてさえいる。
美しい絵画や音楽には興味のない人はいても、喰うことにまったく無関心という人は少ないように思える。
この意味でヒトの舌は、快楽に直結する感覚器に進化したのかもしれない。
毒見役だったセンサーが、グルメな舌になるまでにどのような進化を遂げてきたのか、その「面白味」をぜひ味わっていただきい。
最も原始的な単細胞生物、たとえばアメーバは、近くに砂糖やアミノ酸を置くと、そこに近づこうとする。
また、酢のような酸っぱいものやキニーネのような苦いものを置くと、そこから逃げようとする。
自分にとって甘味やアミノ酸はいい味がする「栄養」であり、酸味や苦味は「毒」である可能性が高いことを、アメーバは「化学受容器」によって感知しているからである。
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アメーバならずとも、私たちの体内にある血液細胞や生殖細胞でさえ、このような化学受容器に近いものをもっている。
あらゆる動物が「もの喰う」ために最低限必要なのは、この化学受容器なのである。
舌の先祖であるこの感覚器は、動物の誕生と同時に生を享(う)けたといっていい。
原始的な動物にとって世界はとても単純で、自分に「必要なもの」「害をなすもの」「関係ないもの」の3つで構成されている。
自分の周りにあるものが、そのいずれであるかを知るために、動物は身近な「化学物質」を利用した。・・・・・・・・
辞書によると化学物質とは「化学の研究対象となる物質」と定義されている。
つまり、光・熱・音・電磁気など、物理研究の対象となるもの以外の、私たちの周りにあるほぼすべての「もの」が、化学物質といえる。
化学物質のなかには砂糖や塩のように味のあるものだけでなく、たとえばアンモニアのようなにおいのあるものや、酸ヤアルカリなどのように味とにおい以外の「一般化学感覚」を引き起こすものもある。
原始的な動物の化学受容器はこれらを区別できず、一緒に感知している。
とはいえ、少なくとも周囲の状況を知ることには成功した。
この化学受容器から、味覚器や嗅覚器などの「専門器官」が進化してくるのである。
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