かまぼこ山とスパゲッティの木
私の生まれた宮城県美里町小牛田の隣町に、加護坊山(かごぼうやま)という丘陵に近い小山があります。
小さい頃はこの山を「かまぼこ山」とよんでいました。
ある日、私の姉は私をからかって「かまぼこ山」には「かまぼこの木」が生えているんだというほら話を教えました。
いったいかまぼこの木ってどんなだろう?かまぼこはいつ生るのかな~と、けっこう長い間信じていたんです。
だました姉には多少ムカッときますが、それでも小さい頃は夢があって実に楽しい時期だったな~と、我がことながらつい微笑んでしまいます。
さて、そんな話を思い出したのは、伊丹十三の「女たちよ!」のなかにある話を読んだからです。
こちらは英国の大の大人が「かまぼこの木」より想像が難しい?「スパゲッティの木」をそのまま信じてしまったというお話です。
文中の写真は、この話を実際に放映したテレビ映像を私がネットで見つけてたものです。
私の友人にルドヴィク・ケネディという男がいて、二年ほど前にやはりこのエイプリル・フールの偽ニュースを作った。
まずイタリー北部の荒涼たる風景が写し出される。沈鬱な音楽が流れ、アナウンサーも沈んだ暗い声でいう。
「今年はスパゲッティ栽培者たちにとっては悪い年であった。異常な寒さと、長期に亙る雨によってスパゲッティの木木は開花期に壊滅的な打撃を蒙ったのである」
解説につれてカメラはスパゲッティの木木の間を移動してゆく。木のところどころにはスパゲッティが房のように垂れている。年老いたイタリーの農夫が木を見上げている。
「1907年以来といわれる凶作の今年。僅かに実ったスパゲッティの木を見上げる農民たちの表情は暗い」
なにしろスパゲッティが、そのまま木にふさふさと生えている光景というのは余程奇想天外であったに相違なく、この番組は大評判であった。
スパゲッティが木に生るということを信じてしまった人も大分いたらしい。日本人みたいに麺類好きの国民には考えられぬことだが、そこが大英帝国というものである。
なにしろイタリーなんぞは半分植民地くらいに思っている老人がいくらでもいるのだ。外国へ旅行しても万事英国式で押し通す。スパゲッティが木に生るといわれれば、それが植民地事情と思うだろう。そもそも興味あるまい。
そういう動脈硬化の連中がコロリと騙された。ルドヴィク・ケネディ君の得意や思うべし。
この本は1968年出版です。伊丹十三さんがもし生きていたら間違いなく超有名ブロガーとなっていたことでしょう。
この本を読んでいると実に楽しい!
その反面、伊丹さんの柔らかい知性に嫉妬してしまいそうにもなります。
彼こそヨーロッパという本場仕込みの「エスプリ」と「ユーモア」を体現した日本人といえるでしょう。
BY NOBO
Category: おもしろいこと, キラっと輝くものやこと, 変なこと