パソコンを捨てた会社

[ 0 ] 2014年3月5日

私が20代の頃、仕事場にパソコンはありませんでした。今では電気や自動車のようになくてはならないもの?それじゃ昔はどんな働き方をしていたっけな~、と考えてしまいました。

どんな職場も、いや生活そのものも、液晶画面とにらめっこの社会になってしまいました。

テレビ、パソコン、タブレット、スマホ。。。

考えてみれば不思議です。

そんな液晶道具がなかった頃でも問題なく仕事ができていたのに、なぜ今は「にらめっこ」(だけ)が仕事になってしまったんだろう、と。

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そんな思いにさせられたのは、FB仲間から教えられたこの記事がきっかけでした。

→報・連・相(ほうれんそう)を禁止せよ

なんと、この会社「未来工業」では「3年前、営業スタッフのパソコン83台を撤去、処分した。」のだそうです。

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その決断は、二代目社長(創業者の息子)の実に「本質的な仕事哲学」からでした。

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「小学生ではあるまいに、なぜ、いちいち連絡をしてくるのか。通話料も無駄だし、かけてくる社員の時間はもちろん、受ける事務員の時間も無駄」とばっさり切り捨てる。

それだけではない。数年前、同社では営業日報も廃止した。

山田雅裕社長は「『どこどこを訪問してカタログを置いてきた』といった報告を書かれてもなんの参考にもならない」と廃止した理由を語る。

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未来工業という会社は日本を代表する「ホワイト企業」と呼ばれています。

「年間休日数日本一」「残業0」「得意先との強い信頼関係」。。。

私もずっと昔から、この会社については尊敬の念を持っておりました。

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これらをなすための全社的工夫は実に参考になりました。

 電話受付の女性陣が3万点もの商品について勉強し、問いあわせを転送しないで完結させる。

営業マンは工事現場に出向き、現場の真のニーズを探って商品開発、改善に即活かす。

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創業者は以前、自社の戦略についてこう話していました。

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売れないものを作れ

「経営コンサルタントは、売れないものはやめろと言いますが、私は売れないものを作れと言う。例えばスイッチボックス。

たいていのメーカーは売れ筋の四種類だけです。

うちは六十四種類も作っている。もちろん月産四百万個のうち、四種類以外は合わせても数千個で、大赤字です。

しかし、スイッチボックスに関して、我が社は日本一の総合メーカーで、どんなタイプもあることが貴重なんです。

ほかには無いから、ユーザーは絶対に喜んでくれます。

商売は、そう思わせることが大事。売れ筋の四種類も、うちから買ってくれるようになり、市場占有率は80%になりました。

一品一品では赤字でも、トータルでは黒字になる。

もっともこの戦略が社内で理解されるのに二十年かかりました」

どこかに違いをつけろ

「我が社の製品は、他社も作っているものばかり。それでも他社とまったく同じものは作らない。どこかに違いをつける差別化が鉄則です。

でなければ、価格競争になる。規格品でも、法律に触れない程度の工夫はできるのです。

例えばスイッチボックスのネジ穴はよそのメーカーはすべて二つだから、うちは四つにした。

それだけで、柱に留めやすくなり、売れました。

すぐまねされるが、次は付属のネジを通常より五ミリ長くした。

その違いがお客さまには喜ばれる」

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とても良い意味で日本的価値観を経営哲学とした「未来工業」ならではのパソコンバイバイ作戦でした。

真に役に立つ道具や器具を作っている会社だからこそ、道具に振り回されることへの拒否感が強かったのかもしれません。

しかし、考えてみればその世界は私たちが20代頃の仕事においては当たり前のことだったわけです。

じゃ、その頃どんなふうに仕事をしていた?と思い返してみました。

「液晶と向き合わない分、同僚や上司と職場での対話とか話し合いがとても多かったな~。つい仕事以外の話にまで発展したりしたな~」

「それと仕事場では助け合いがもっとあったような気がするな~」

昔のほうが、コミュニケーションとれていたという感じがしています。

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未来工業パソコン廃棄の話をある30代の友人に教えたら、こんな返事が来ました。

 これ、前提として営業マンが自分で完結できるような営業の仕組みになっている事が大きいですよね。

報連相自体は目的が明確じゃないと、書いているとおり、メールのCCで溢れますから意味が無いです。

実際以前働いていた会社ではそうなってて、呆れていました。

そもそも、「情報共有」=「情報を送りつける」という勘違いの元に運用している会社が多いのではないでしょうか?

情報とは、必要な人に必要なタイミングで届くから価値があるのであって、以前から言っているようにそれ以外はゴミでしか無いと思っています。

コミュニケーションもしかりです。ツイッターやフェイスブックでコミュニケーションを相互に取れる友人はごく一部です。

それ以外は、なんとなく「いいね」をしていると思います。

というか、「いいかもね」「わるくないんじゃね~」じゃないでしょうか?

彼はIT系の仕事をしていまして、企業にコミュニケーション改善やらITを活用した業務改善の仕事をしているのですからびっくりです。

ところが最近悟ったところがあるようで、自分のスマホからインターネットに容易にアクセスできないようにしたそうです。

そんな彼にメールを出すと次のような返信がきます。

このメールは自動送信されております。
———————————————-
ご連絡ありがとうございます。

申し訳ございませんが、業務の都合上、メールのチェックは夜と朝の2回とさせて頂いております。

お急ぎの方は、大変お手数ではございますが、携帯電話までご連絡いただけますようお願いいたします。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

この前会って話をしたとき彼はこう言っておりました。

「ようやくネットから解放されて、(普通に)仕事ができるようになりました。」

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未来工業だって、営業部門以外はパソコンが活躍していることでしょう。

極論に近い話は、「どうせ無理だ、極端だ」と敬遠しがちです。

しかし、凝り固まった筋肉をほぐすために行うストレッチみたいなものと思って役立てるのがいいのではないでしょうか。

それは、凝りがどれほどのものか、どこが凝っているのかを自分に教えてくれます。

仕事にもストレッチは欠かせないようです。

ノボ村長

Category: キラっと輝くものやこと, 思いがけないこと

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