ノボノボ童話集「人生相談の達人」

[ 0 ] 2018年8月21日

「なぜ?」は人間ならではの言葉でしょう。しかし、その「なぜ?」が自分を傷つけてしまう場合もあります。当たり前であることにも「なぜ?」と問えばどうなるだろう?自分自身のセラピーとして書いてみました。

ノボノボ童話集

人生相談の達人

 隣の町に「人生相談の達人」がいるという。

 親しい友人数名が実際に相談したらしい。

 その効果を聞かされた彼は疑った。

 彼は理屈の通らないことが大嫌いな性格だった。

 そこで達人の家の前で観察を始めることにした。

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 最初に達人の家に入ったのは、

 足が不自由で痛そうに歩く男。

 入るときはつらそうな顔をしていた。

 たった数分後、男は笑ってその家から出てきた。

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 次に入ったのは子どもを連れた女性。

 子どもは小学生くらいだが、

 少しネジがゆるんだ感じの子だ。

 やはり数分後、母親は微笑んで

 子どもを抱きしめながら出てきた。

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 三人目はいかにも貧しそうな男。

 体はやせ細り、栄養が足りないようだ。

 この男も数分後には、

 晴れやかな顔でスキップしながら

 達人の家を出てきた。

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 彼はキツネにつままれたような気がした。

 もしかして催眠術か?と思った。

 好奇心旺盛な彼はそれを確かめるべく

 彼らを追いかけた。

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 晴れ晴れとした顔の彼らに聞いてみた。

 「大変失礼ではありますが、

 お悩みの内容はだいたい想像できます。

 しかし、数分でお悩みがなくなるとは、

 達人はいったいどんな回答をされたのですか?」

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 三人が話す内容は同じようなものだった。

 しかも、おどろくほど単純なものだった。

 このような会話がなされただけらしいのだ。

 三人の相談はみな、縮めていえばこうなる

 「なぜ私は不幸せなのでしょう」

 人生相談の達人はそれぞれにこう聞いたらしい。

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 足の悪い人には、

 「なぜ、両手や片足はまともなのでしょうか?」

 子どもが不憫な母親には、

 「なぜ、この子は普通に生きているのでしょうか?」

 貧しそうな男には、

 「なぜ、ここに来るファイトがあるのでしょうか?」

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 理屈っぽい彼だが、妙に納得できた。

 そう言われりゃ、たしかにそうだよな、と。

ノボノボ童話集
→「無敵の鎧」
→「妖怪ワケモン」
→「森の言葉」
→「究極の薬」
→「アキレスと亀」
→「宇宙への井戸」
→「思いがけない幸せ」
→「本屋の秘密」
→「美しき誤解」
→「サンタの過去」
→「車のない未来」
→「恐怖のミイラ」
→「一番暖かい服」
→「沈黙は金」
→「素晴らしき嘘」
→「未来から来た花嫁」
→「未来のお化粧」
→「幸せのタイミング」
→「リンゴ箱のもみ殻」
→「ストーブ隊長」

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