「あじのもと」な日々

[ 0 ] 2019年12月26日

この話は極めて個人的な嗜好に関する戯れ言、愚痴の類いですので、意見や嗜好が異なる方はあまり目くじら立てずサラッと聞き流していただければ幸いです。

f:id:kawasimanobuo:20190928204801j:plain

(ミツバチの蜜蝋で作られたろうそくはほのかな香りがgood!です)

巨大スーパー付属の映画館でB級洋画を観てきた。早く着いたので、スーパにある和風レストランでまず昼食。食事が届く前に備え付けの醤油をさらっと点検。あ~~ここもか。。。つまり「あじのもと」入りの醤油であった。今や食べ物もサービスも、何から何まで余計な添加物だらけだ。まるで「いらっしゃいませ、こんにちは!」の異常な挨拶のごとく。。。(「あじのもと」は化学調味料の総称として使っています。)

 

少し横道にそれる。どこのコンサルが広めたか知らないが「いらっしゃいませ、こんにちは!」は日本語としてグロテスクと思う。「いらっしゃいませ」と丁寧にお辞儀をした後急に顔を上げ、にやけて「こんにちは!」とため口のようなあいさつをする感じだ。流行かけの頃、若い女の子がお客の顔など見ないで呪文のように大声で連呼していた。そんな居酒屋とかレンタルビデオ屋が多く閉口したものだった。まさに慇懃無礼の見本ではないだろうか。

 

さて本題に戻ろう。実は私は小学生の頃、砂糖と間違って「あじのもと」を小さじひとつなめたことがあった。些細なことかもしれないが、この事件が私の一生を左右するできごとになった。歯茎が浮き上がるような、ヒマシ油のような、吐いても口をすすいでも消えないしつこい気持ち悪さ。一日中具合が悪かった。今でもあの日の感覚が口中によみがえる。それから化学調味料は大嫌いになった。

 

アメリカでも問題になったらしい。チャイナタウン・シンドロームとか言われているが、中華街で化学調味料を使いすぎ、嘔吐、だるさ、めまいを生じる人が多発したそうだ。ずっと前、「あじのもと」がだめなら「ハイミー」にしたら、なんて冗談を抜かす友人がいたが、彼は耐性だから所詮私など変人扱いである。「あじのもと」は自然のサトウキビからつくるんだぞ、と説教する友人もいるが、どのような製造工程でつくられるかを知ったら、彼だって積極的に摂ろうとは思わないだろう。

 

とはいえ、あらゆる食品に化学調味料が入っている現代、私もけっこう慣れてきて隠し味程度の化学調味料はなんともしないで食べられるようになっている。家でもたまにめんつゆを隠し味にしているらしいが、許容範囲内である。どうしてもがまんできないのが、化学調味料入りの醤油や味噌、みりん風調味料などだ。私の気持ちがわからない人は、清酒や米のご飯に化学調味料が入っていたらどうか想像してみるといいだろう。きっと嫌に感じる人は多いと思う。

 

びっくりするのは、そんな化学調味料たっぷりの醤油が業界のコンテストで優勝しているということだ。別々の年に二つの会社が受賞したが、どちらも私の知り合いの醤油屋さんだったので実に悲しい。私はとても刺身につけて食べられない。地元応援ということで多くの飲食店や温泉旅館でも使われているので、私はまいってしまう。

 

一年ほど前に女房とある温泉旅館に行ったときもそうだった。旅館のお出迎えサービスとして着くそうそうトコロテンをだしてくれた。その時の醤油がこの化学調味料醤油であった。私はおそるおそる「できれば普通の醤油に換えてもらえませんか?」と頼んだのだが、これしかないというのであきらめて食べなかった。

 

軽い気持ちだったのだが、部屋に着いたら料理長から電話が来た。この旅館ではこの醤油以外ないし、料理もこの醤油でつくっているとのことだった。クレーマーだと思ったのだろう。私はそれで大丈夫ですよ、と言って電話を切った。ところが出てきた食事を見て驚いた。私の分だけ女房の献立と全く違う料理が出てきたのだ。すべて醤油を使わない料理、添えられた調味料は塩のみ。。。私は何も言わないのに勝手に化学調味料アレルギーと思ったらしい。その夕食のなんとわびしいこと、女房は笑って美味しそうに本来の献立を食べていた。

 

さて、今月初めのことである。南三陸の有名な海鮮加工食品メーカーに熊さんのコンサル助手でお邪魔した。嬉しいことにこの会社が作っている百種類以上の製品には化学調味料が使われていない。昼食時そこの社長さんとお話しする機会があったので、そのことを賞賛すると思いがけないことを聞かされた。

 

実はこの地域で化学調味料を入れないのには、昔ながらの味を大切にする理由以外にもうひとつの事情があったということだ。それは隣の有名な市が海産物では日本有数で、そのため大手の化学調味料メーカーが昔から進出していたとのこと。その会社との付き合いがあって、その市の加工会社はみな化学調味料を使用してきたということなのだ。

 

この南三陸は多少規模が小さかったため、幸運にも?化学調味料の侵略から逃れ得たらしい。先ほどの化学調味料入り醤油を出している醸造元とも取引あるが、特別に化学調味料を入れない醤油を出荷してもらい製品に使っているとのことだった。これを嬉しいと思う人は私ぐらいかな~~と思いつつも大変嬉しい思いがしたものだった。

 

さて、本題のさらに本題はここからだ。化学調味料だらけの社会、天然だしの味など誰も気にしなくなってきた。化学調味料嫌いなんですというとまるで変人のように思われるこの頃、できるだけ化学調味料に慣れようとしている自分がいて、われながらびっくりしてしまう。

 

実は、政治や社会に対しても同じような傾向に陥りつつある自分なのである。政治家が奔放になんでもござれの無法をしても、正義を言うだけ虚しい、風向きが変わるまでしょうがないとあきらめ、あまり深く考えようとしない自分がいる。

 

原発もそう。いくら反対したって超巨額の金をかけ大きな利害が絡む国家的超巨大産業、どう反対したって国も電力会社も大手企業もあらゆる手段で再稼働するに違いない。深く考えれば考えるほどノイローゼになってしまう。それより賛成派の意見やその根拠を詳しく調べ理解し、少し気持ちを楽にしてみようなどと思ってしまう。

 

季節はもう秋、「もの言えば唇寒し秋の風」そのものの心境である。どうせなんともならないこの社会、安眠のためには自分を相手に合わせていくより他ないや、とあきらめるこの頃なのである。

 

もう少ししたら、化学調味料入りの醤油も味噌も(美味しいとまで言わないまでも)なんとも感じずに食する自分がいることだろう。。。もう少ししたら、誰にも当たり障りの無いことを言う自分、それも表面だけでなく心からそうである自分がいることであろう。。。

 

せめて水木しげるさんが座右の銘としていたゲーテ爺さんの言葉を私も心に刻み、最後の砦だけは守らないとな~~、と書きながら思い始めている。。。

「精神の意志の力で成功しないような場合には、好機の到来を待つほかない」

→ゲーテ「好機の到来を待つ」

by ノボ村長

Category: キラっと輝くものやこと, 変なこと

コメントはこちらへ